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受益権の複層化/信託と遺留分請求

■ 受益権の複層化
受益権が複層化された信託」という仕組みがあります。
 この信託の仕組みでは、「収益受益権」と「元本受益権」、それに「収益受益者」と「元本受益者」というそれぞれ2種類の受益権と受益者が登場するのです。
 この権利の内容などについては、信託法上定めがなく、これから内容が確定することになりますが、税法の考え方(説明)を見ると次のとおりです。
 収益受益権というのは、設定された信託に関する権利のうち信託財産の管理及び運用によって生ずる利益を受ける権利をいい、この権利を有するのが「収益受益者」です。それから、信託に関する権利のうち信託財産自体を受ける権利を「元本受益権」といい、この権利を有するのが「元本受益者」であると言われています。
 この仕組みを利用すると、相続人の中に信託財産の運用益等をもらえる者と、信託財産自体をもらえる者が現れるのです。この受益権複層型信託は、相続税法でも想定されています(同法第9条の3第1項、平19課資2-5、課審6-3追加)。
 
 
 
■ 信託と遺留分減殺請求
 信託法には、新しく「後継ぎ遺贈型受益者連続信託の特例」が設けられています(法91条)。
 この特例によれば、委託者兼当初受益者となるSさんの相続のときに遺留分の問題は生じますが、その後の第2次受益者Yさんの相続のとき、さらにはYさんのお子さんの死亡時の受益権の承継では遺留分の問題は生じない仕組みとなると考えられています。 
 ところで、書籍をみると、例えば、Sさんが、信託契約の中で信託法91条を適用し、「Sが死亡したときその受益権は消滅し、これを新たにYが取得する」と定めた場合、Sさんの死亡によりSさんの受益権は完全に消滅し相続財産からも消えますので、その後他の者(Yさん)が同種同等の受益権を移転取得したとしても遺留分の問題は生じないという考え方を示している者がいます。
 しかし、この考え方には飛躍があると考えています。第1次相続の場合、受益者Sさんの受益権はSさんの死亡により消滅し、委託者Sさんが定めた条件のとおり、委託者Sさんの財産(受益権)として次にYさんに遺贈(税法的に言えば)されるのであり、遺贈に伴う遺留分の問題は最初(第一次相続時)は残ります。
 
 
 
遠藤家族信託法律事務所
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