認知症と後見/信託
認知症について
(1) 認知症について
認知症の人は、初期の段階でも、財産管理が難しくなります。しかも、不安症や易刺激症などから、いわゆる“オレオレ詐欺”などの被害に遭うなど、ガードが甘くなりやすいのです。
認知症とは、「いったん正常に発達した脳を中心とした疾患を原因として、記憶や判断力などの障害がおこり、普通の社会生活が送れなくなった状態」です。
多くの場合、「その人が持っている高次の精神的機能が喪失し、それまで育んでいた社会において必要な認知能力が失われ、普通の社会生活が送れなくなること」と言われています。しかも、その人が、培ってきた知識や技能、体験の記憶喚起、情報の分析・集約、物事の道筋や道理を理解判断する能力、それから生きがいを発揮する力を失ってしまうという、何とも残念な忌まわしい病気なのです。
(2) 認知症は、原因となる病気にもよるが、何年もかけてゆっくりと本人の精神(心も)をむしばむのです。
かかる病気にかかった人も、「認知症という病気であっても幸せに生きたい」と願っています。この願いをかなえてやるのが、福祉制度や医療であり、そして成年後見制度なのです。
したがって、成年後見制度に携わる人は、認知症のことを正しく理解して、ご本人や家族の方と接する必要があります。
(3) 認知症は脳の病気の集まりです。
認知症は、一つの固有の病気ではなく、記憶と判断力の障害を基本とする症候群(病気症状の集まり)であり、原因となる病気はおおよそ70種類にも及ぶと言われています。
それは、アルツハイマー型認知症(脳細胞の急激な減少による病的な脳の萎縮)と脳血管性障害(一次性認知症)に代表されますが、このほかにレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、若年性認知症などもあるのです。
(4) 認知症は特異な行動や症状が出ます。
したがって、専門医の診断を受けて、適正な治療等を受け、任意後見制度をふくめ成年後見制度を活用して、ご本人の権利を護る必要があります。
認知症と成年後見
(1) 認知症、イコール「意思能力がない」 この考え方は間違っています。
多くの認知症は、判らない間に発症し、緩徐に進行します。したがって、ごく初期の段階では、多くの人は判断能力はあるのです。ここにおいて、この段階で、早期に任意後見契約を締結して、来るべき時に備えることできるのです。
(2) では、成年後見の申立ては、何時やるべきなのでしょうか。
大変、難しい判断になります。当然、「自分のことについて判断できない」あるいは「身体的に問題がないのに、自分の考えどおり実行できない」、この場合は当然に申し立てる必要があります。
医師の診断書をお取りいただいて、法律家に相談するのがよいと思います。当事務所では、簡単なご質問については、電話でもアドバイスさせてもらっています。
認知症と家族信託
(1) 家族信託は、成年後見制度と同じ、財産管理制度です。
したがって、最近では、大事な財産を信託譲渡して適正に財産の管理をして、本人やご家族の生活を護るために、家族信託が活用されるようになりました。
家族信託がどのような法的制度で、いかなる仕組みなのかは、本ホームページの家族信託の説明をご覧ください。
(2) 家族信託は、信託を設定した本人が認知症により判断能力が喪失した後も、本人の考え(「信託の目的」という形で)が実現できる制度です。
認知症のごく初期の段階でも、他に疾患等があって意思表示できない場合は別ですが、信託契約を締結することは可能です。
家族信託契約は、大変難しい契約です。民事信託をよく知っていて、アドバイスもしっかりやっていただける専門家に相談してください。お近くに、かかる専門家がおられないようでしたら、当事務所にお電話ください。