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地域後見を考える

成年後見制度と地域後見

■ わたしの考えている地域後見
 「地域後見」とは、一般市民も家族も、認知症高齢者等の後見人として、地域の力を借りて後見事務に携わる仕組みです。
 この制度では、一般の市民後見人のみならず、家族後見人(任意後見人)も地域の市民後見人として包摂し、この地域市民後見人が、地域の力、公的な支援等を受けながら、被後見人本人の権利を擁護して本人の最善の生活と福祉を確保するという仕組みです。
 
 この説明は、拙書「新しい地域後見人制度」(日本加除出版)の中で、詳しく説明しています。
 
■ これからは「地域支援型後見制度」が必要です。
 成年後見制度は、親族後見人と第三者後見人によって支えられているが、これから大事なのは、もちろん「親族後見人」であり、また「市民後見人」です。
 このような後見人を支える「地域後見センター」は不可欠です。
 この地域支援型後見の仕組みの中心にあるべき組織は、国が取り組み始めた地域後見支援組織(地域後見実施機関:地域連携ネットワーク)の「公的・地域後見センター」であると考えています。
 
■ 地域後見の「中核機関」と「実施運営機関」
 これからの成年後見制度が、多くの人に信頼されて、以前のような利用の増加を望むには、地域の中で後見人をサポートし、本人(被後見人等)の権利を護る組織が必要です。地域後見の「中核機関」と「実施運営機関(地域後見センター)」です。
 いま政府は、この組織づくりを考えていますが、すでに動き出している「実施機関」との関係はどのようになるのでしょうか。
 

成年後見制度と市民後見人・親族後見人

 
(1) 市民後見人とは、主に社会貢献のために成年後見制度の知識、資質、倫理観を身に着け、被後見人本人の目線で、地域の力を借りて本人の権利を擁護するための成年後見人となることを希望する、本人とは親族関係、交友関係のない一般市民のことです。
いま、この第三者後見人として、新たに登場した「市民後見人」が注目され、国もこの市民後見人の養成等の事業(市民後見推進事業)に乗り出しています。
 この制度は、それぞれの地域において後見制度を必要としている人々と市民後見人のための後見ニーズ等に答えるために、市区町村が主体となり、家庭裁判所をはじめ法律家や福祉等の専門家の団体等と連携を図りながら、社会福祉協議会、NPO法人などの団体に委託し、「後見実施機関(成年後見センター)」の設置と市民後見人養成研修を実施すること、そして研修等を受け資質の備わった市民後見人(候補者)を実際に公的後見人として活用しかつ組織立って継続的に支援するという取り組みです。
 そこで、家族後見人も、市区町村による市民後見人の育成支援事業(市民後見推進事業)や地域連携ネットワークの対象者として、市民後見人と同じ知識と資質、倫理観を学ぶことが不可欠となっています。そして、誠心誠意、本人(被後見人等)を支えることが大事になっています。
 
(2) こんにち、市民後見人もまた親族後見人という、レッテルは取り外すべき時に来ていると思います。
市民後見人もまた親族後見人も、ともに「公的」な「地域後見人」としての知識と資質、それに倫理観を備えなければならない時代が到来しているからです。
 
 そこで、家族後見人も、市区町村による市民後見人の育成支援事業(市民後見推進事業)や地域連携ネットワークの対象者として、市民後見人と同じ知識と資質、倫理観を学ぶことが不可欠となっています。そして、誠心誠意、本人(被後見人等)を支えることが大事になっています。
 
(3) 家族は最良の後見人候補者です。
 この家族後見人の養成・研修教育そして指導支援なくして我が国の成年後見制度は成り立たないことを再認識し、市民後見人とともに、国が推進する「地域の後見人育成支援事業」(地域連携ネットワーク)に組み込み、その育成指導そして支援を行うべきです。
 

地域後見と市民後見人養成講座

 
■ 当事務所所長は、これまで多くの団体の市民後見人の養成等の事業(市民後見人養成講座)の講師を務め、市民後見推進事業に取り組んできました。
 このような養成講座の中で、家族後見人も地域後見人として、市区町村による市民後見人の育成支援事業で学ぶことを訴えています。
 
■ さらに、市民後見人として活躍している、複数のNPO法人の業務指導委員等に就任して、正しい後見事務が行われるよう力を注いでいます。
 
■ また、「地域の後見人育成支援事業」を担う市区町村の後見実施機関の行う、フォローアップ研修の講師を務めさせていただいております。その機会に、後見実施機関の確立に助言してきました。
 この研修は、一般社団法人地域後見推進センターの事業が主なものです。
 これからは、この実施機関と成年後見制度利用促進計画が立ち上げようとしている「中核機関(後見センタセンター)」との組み換えが課題となっています。
 
 

東京大学 市民後見人講座 終了式遠藤所長挨拶

 
                     令和2年2月22日
 
■ 主催者側を代表してご挨拶申し上げます。
  第12期生の皆様、研修に汗を流しこれが実り、本日の修了の日を迎えられたこと、誠にお目出とうございます。本来でしたら、私共の北野理事長から祝辞を申し上げるべきところですが、健康の関係で、本式場に出られませんので、執行理事の遠藤からはなむけの言葉を申し上げます。まずもって、116名の方、修了お目出とうございます。
 
■ 皆さんが、受講されたカリキュラムや実習については、後に学事報告で説明があろうと思いますが、私共は、市民後見人講座では、これ以上の人材を集めることがむずかしいと思われる先生方を、講師陣に迎えて、取組みさせていただきました。その先生方のご尽力に対しても、御礼を申し上げたいと思います。
  皆様も実感されているとおり、内容も、学問的なことから、実践にわたる深みのある内容を提供させていただいたとおもっています。ここで学んだことを、これから仕事のなかで、またさまざまの生活の中で生かしてほしいと思います。
 
■ そこで、お願いがあります。それはここで学んだ成年後見制度につき、これからも常に新しい情報を得て学び直して、真に自分のもの、知識にしてほしいということです。
 
■ いま、成年後見制度は、大きく動いています。今日の社会、さらにこれからの社会を見た場合、「高齢者が高齢者を支援する社会」「高齢者を護る社会」が、一層深化、深まって行きます。そのような中で、成年後見制度もまた大きく変わろうとしています。
  
■ 親族後見や市民後見の在り方はもちろんですが、「後見とは何か、財産管理だけではないはずだ」とか、「後見監督も、監視監督だけではないはずだ」という考えが台頭し、これが解決すべき大きな課題となっています。
  そもそも後見の在り方として、「財産管理重視型の現状を変えて身上保護重視型の後見にいかに移行するか、即刻考えるべきであること」や、「後見監督に如何に後見人支援を組み入れてゆくか」という課題もあります。しかも、不満や不信感の多い「後見人報酬の基準」をどうするか、それから、「(何もしない職業後見人がいる中で、これを改革するために)意思決定支援の在り方をどうするか」、そして、すべての市町村に、地域後見連携ネットワークに支えられた中核機関をいかに構築するか、さまざまな課題が浮上しています。
■ 政府厚労省をはじめ、最高裁判所、地方治自体などが、これらの課題を一つでも解決しようと、検討し解決に向けて鋭意努力しているのが現状です。
  それに後見事務の現場で、また学問の場で、そして利用促進法の議論の場で、論究され、めまぐるしく動こうとしています。皆さんが、学んでいたことが、次から次と新しく変わって行くという、成年後見制度にとっては、正に動乱の時代です。
  そんな中で、成年後見制度は、3専門職を中心とした法定後見制度が王道であるという勢力、私のように、任意後見制度を中心に、家族も市民も大事にし、支えて行くべきだという考えの者、そして成年後見制度など使うものではないという勢力まで、入り乱れています。しかも、東京や大阪を中心に考え、地方の実情を考えようとしない者もいて、私も、先が読めません。
 
■ しかし、基本は一つです。“支援が必要な人を護る”ということです。このことは忘れてはなりません。
  そして、いま一つ、私は“この「支援する人も支援すること」、要は後見人をも守るのが、これからの後見制度だ”と思っています。
 
■ そのために、私は、これからは、地域後見が大事だと、いろんなところで申し上げています。被後見人を護る、家族後見人もまた市民後見人も地域によって守られるという、制度がこれからの成年後見制度の中核にあるべきだと思っています。これが、地域連携ネットワークの中で、政府が示している「チーム」です。
 
■ 再度申し上げますが、成年後見制度は大きく動いていますが、支援が必要な人を護る、大事な制度です。このことを忘れずに、皆様の仕事の上で、また生活の上で、学んだことを生かしてほしいと思います。
  皆様のご活躍を祈念し、私の祝辞といたします。本日は誠にお目出とうございます。
遠藤家族信託法律事務所
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